Rhyzm観

ぼっち・ざ・ぶろぐ!

「舞台」リコリス・リコイル

どうやらこの世には2つの世界が存在するようです。

1つは3次元。それは私たちが生きている現実の世界。

もう1つは2次元。それは現実とは隔たれた画面の向こうの世界。

 

我々人間は時として、3次元よりも2次元の虜になります。

現実ではありえない魔法に憧れたり、

人外的な能力を以て戦う姿に惚れたり、

友情・努力・未来・勝利・A Beautiful Starなストーリーに心惹かれたり。

 

またある時には現実をベースとした空想の物語にも魅了されます。

チームの仲間と共に大会優勝を目指すスポーツもの、

バンドを組んで自分たちだけの音楽を目指すもの、

人間関係に悶え悩みながら答えを出す恋愛もの、

そして、喫茶店で働く少女たちの日常もの。

どれもそれぞれ特有の魅力があり、私たちの心をつかんで離しません。

 

 

ところで、こう思ったことはないでしょうか。

 

「これが現実だったらいいのに」

「この世界に自分も飛び込めたらいいのに」

 

今回は、そんなお話。

 

Rhyzm観、開演です。

 

 

 

 

0.「アニメ」リコリス・リコイルとは

2022年夏に放送された「リコリス・リコイル」。

オリジナルアニメーションとしては異例レベルの大ヒットを記録し、2022年夏アニメどころか、2022年アニメを代表する作品となりました。

ただ、ここは本題ではないので見たことない方はとりあえずHPとアニメを見てください。

lycoris-recoil.com

 

1.「舞台」リコリス・リコイルとは

lycoris-recoil.com

2023年1月7日から15日の間、天王洲 銀河劇場にて披露された、いわゆる「2.5次元舞台」です。

アニメや漫画など2次元と、リアル舞台の3次元。その中間にあるものとして2.5次元

すなわち、2.5次元舞台とは「漫画やアニメを原作とし、それを限りなく現実にしてくれる舞台作品」ということになります。

 

それを踏まえての「舞台」リコリス・リコイル 感想戦ですが、ハッキリ言って

 

観客の期待や高まったハードルを悠々と超えていく、最高の舞台

 

でした。

 

普通だったら絶対に手の届かない「アニメ」リコリス・リコイルの世界を、現実に引っ張り出してきてくれる。

あるいは、我々観客をリコリコの世界に連れて行ってくれる。

そんな素敵な舞台は、具体的に何がどう素晴らしかったのか、心に響いたのか。

1オタクの戯言ですがお付き合いください。

 

2.「舞台」リコリス・リコイルの魅力

本舞台の魅力は大きく4つあると認識しました。

(もちろん何もかもが素晴らしかったのですがここでは大きく4つとさせていただきます)

 

魅力その1:キャラクターがそのまま現実に飛び出してきたかのような再現度

我々観客の心を一番に掴んだ要素、それがこの「圧倒的再現度」

Twitterの感想ツイートを見ていてもこの「再現度が高い!」という意見が一番多かったように感じます。

 

リコリス・リコイルの2次元と3次元における最大の隔たりはなんといってもキャラクターと銃撃戦。

 

アニメの中の魅力的な設定モリモリで個性の塊みたいなキャラクター達を現実で再現するのがいかに難しいか、想像するのは容易でしょう。

容姿はもちろん、表情・声・喋り方・仕草・姿勢なども含めたキャラクターの再現を求められます。

 

加えてリコリス・リコイルでは銃を用いた戦闘シーンもあり、そのアクロバティックな動きも再現する必要があります。

特にこの銃撃戦をどのように舞台で再現するのか、期待とともに一抹の不安を抱えていた人もいるはずです。

 

その不安を一瞬で吹き飛ばしてくれたのが、冒頭のたきなの戦闘シーン。

立ち姿、表情の作り方、そして殺陣。千束と出会う前の、冷静かつ冷酷な井ノ上たきながそこにはいました。井ノ上たきな役 本西彩希帆さんではなく、井ノ上たきなが。

そして機関銃を観客席の方へ一気にぶっ放して「舞台」リコリス・リコイルの幕が上がります。

この段階で心の中から不安なんてものは全て消し飛び、どんな素晴らしいものを見せてくれるのか、という期待しか存在しませんでした。

 

百聞は一見に如かず。ぜひ映像で見てみてください。

 

魅力その2:コミカルとシリアスが切り替わるテンポ

「アニメ」リコリス・リコイルの魅力の1つでもあった、コミカルなシーンとシリアスなシーンの移り変わる早さが舞台でも見事に再現されていました。

最も印象的だったのはやはり

 

喫茶リコリコでのボードゲームシーン

→シンジ登場でカオスのできあがり

リコリスが真島に撃たれる

 

という一連の流れでしょうか。

会場中が笑いに包まれるほどのコミカルなシーンから一転、突然のシリアスシーン。

私はあまりの振れ幅の大きさに気持ちの切り替えが追いつきませんでした。

 

「ギャップ萌え」なんて言葉が存在するくらいに、人間はギャップにときめきを感じ得ます。

楽しいシーンは思いっきり楽しく、カッコいいシーンはバチっとキメる。

光のように明るいシーンの裏では、どす黒い闇が秘かに蠢いている。

アニメさながらの、時にアニメ以上のテンポ感でこのギャップを演出してくれたことに驚嘆し、その一気に空気が変わる瞬間に痺れました。

 

また、舞台ならではの強みとして上下左右の空間を使えることがこのギャップ演出に大きく貢献していました。

下でコミカルなシーンをしたすぐ後で上でシリアスなシーン、右で回想シーンを演じながら左では他のキャラクターが見守っている、などのように舞台という空間を余すことなく有効活用することでテンポよく場面の切り替えができていた点が、見ている側を飽きさせない素晴らしい演出だったと認識しています。

 

魅力その3:最初と後半開始時の演出

2.5次元舞台の難しいところの1つに、「いかに観客を舞台中の世界に引き込むか」という点があります。

年を重ね大人になってしまった我々は常日頃3次元という日常を生きており、良くも悪くもフィクションとノンフィクションを区別して認識できるようになりました。

それゆえ、人によっては創作物の世界に没頭できなかったりしてしまうわけです。

アニメや映画ならまだしも、目の前で物語が紡がれていく舞台において「観客が没頭できるか否か」は満足度に大きく関わります。

 

そして特に重要なのは一番最初と、休憩後の後半開始時。

なぜならその2場面において、我々観客は直前まで現実にいるからです。

Twitterを見る者、友人と喋る者、手放せない仕事のやり取りをする者…

(中にはパンフレットを読んだり、スマホの電源を早めに落として開始前特有の緊張感漂う空気を堪能していたりする人もいるでしょうが)(私はその派閥です)

ではそんな現実を生きる我々を、どのようにして「舞台」リコリス・リコイルの世界へ引き込んでくれたのでしょうか。

 

まずは一番最初の開始時のシーンです。

たきなが機関銃をぶっ放した時、舞台上のプロジェクションマッピングではアニメ同様に大量の窓ガラスが割れていました。

(舞台「リコリス・リコイル」公演ダイジェストPVより引用)

ここで我々観客と舞台上の壁を壊し、そこからOPテーマ『ALIVE』へ繋ぐことで観客を一気に「舞台」リコリス・リコイルの世界へ引き込んでくれる演出だったと私は認識しています。

映像で見たい方は下のダイジェスト映像の37秒から、その雰囲気が掴めると思います。

www.youtube.com

 

続いて、後半開始時のシーン。

千束が出てきて、

「喫茶リコリコ、本日は閉店とさせていただきます!」

「というわけで、喫茶リコリコ恒例、閉店後ボードゲーム大会スタート~!」

と我々観客に話しかけてくれます。

 

この瞬間、我々観客は「舞台リコリス・リコイルを見に来た観客」ではなく、

「喫茶リコリコへ遊びにやってきた客の1人」

となるわけです。

 

観客すらも巻き込んで舞台の一部としてくれる。

これ以上の舞台への没頭があるでしょうか。

 

 

余談ですが、このような演出は 錦木千束役 の 河内美里さんが主演を務めた「舞台 やがて君になる encore公演」でもありました。

後半開始時、我々観客は「舞台やが君を見に来た観客」ではなく、

「作中の生徒会劇を見に来た生徒の1人」となるような演出がなされていました。

こちらも素晴らしい作品なのでぜひご覧ください…!

 

 

このように我々観客を「舞台」リコリス・リコイルの世界へ引き込んでくれることによって、素晴らしい作品が完成した…と考えるのは流石におこがましいですね。キャストの方々が言うならまだしも。

素敵な世界に引き込んでいただき、本当にありがとうございました。

 

 

魅力その4:キャラクターとして生きている姿が見える

アニメでも漫画でも舞台でも、場面によって主役が変わる、ということは多々あります。

リコリコで言えば主人公は千束とたきなの2人ですが、場面によってはクルミ、ミズキ、ミカや真島、シンジ、ロボ太、楠木司令など主役が変化します。

 

その場面に応じた主役にスポットライトが当たり、注目を集めるのは当然です。

しかし、舞台ではその場にいる全員がそのキャラクターとして生きているのです。誰ひとりとして止まっておらず、みんなそれぞれの生を全うのしているです。

その様子を見れるというのはアニメにはない、舞台ならでは良さだとハッキリ言えます。

 

例えば、たきなの回想シーンではフキ・エリカ・たきなにスポットライトが当たっていました。

その横で千束・ミズキ・ミカが見ていましたが、各々がリアクションを取っていたのです。ただ傍観していたわけではなく、話を聞いている時のように反応を示していたのです。

 

アニメで回想シーンがあったとしても、その回想中にどんな反応をしているかは直接見ることができませんよね。

でも舞台はアニメの裏側やより奥深くまで見れるのです。

彼ら彼女らがどのようにあの世界の日常を生きているのかまで見ることができるんです。

 

そう、あの舞台にいたリコリス・リコイルのみんなは、紛れもなく
生きて -『ALIVE』して- いた

わけですね!

 

 

…おあとがよろしいようで。

 

 

3.最後に

2023年はリコリス・リコイルのみならず、「ウマ」や「チェ」から始まる某大人気作品の舞台化も決定するなど、舞台の観劇デビューする方が多くなりそうな1年だと思っております。

 

その先陣を切るにふさわしい、最高の作品でした。

カンパニーの皆様、スタッフの皆様、素敵な作品を本当にありがとうございました!

 

当記事を読んで、少しでも「舞台 リコリス・リコイル」および2.5次元舞台に興味を持っていただけたら幸いです。

 

あなたもぜひ、現実と作品の狭間の世界に飛び込んでみませんか?

 

ありがとうございました。

読んでくれて、嬉しい嬉しい嬉しいっ!

 

P.S.唯一の不満点は未だに第二幕の公演決定が発表されていないことです。心よりお待ち申し上げております。あとBlu-ray買いました。楽しみにしてます。さかな~ちんあなご~いせえび~